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2023年 06月 18日

「メナムの残照」のはなし

今日はちょっと趣向を変えて、「知らなかったタイの話」みたいな感じで・・・。

「メナムの残照」という題名の小説。タイ関係者の間では有名だけど、普通の日本人でこれを
知ってる人は少ないはずだ。トムヤンティってタイの女性作家が書いた小説で、第二次大戦中の
バンコクを舞台にタイ駐留日本軍将校とタイ人女性の悲恋を描いている。

原題は「คู่กรรม=クーカム:運命の人」で、英語では「Sunset at Chaophraya」。だから
邦題はこの英語題名を訳したわけだけど、これは当時の間違いに従った題名。日本では昔、
チャオプラヤ川のことをなぜか「メナム川」って呼んでたんだよね。
「メナムの残照」のはなし_c0393255_17362798.jpg
 
しかし「แม่น้ำ:メーナーム」ってタイ語で「川」のことなの。だからメナム川って言うのは
「リヴァー川」って言うのと同じ間違いなんだけど、昔はなぜか誤ってこう呼ばれてた。
だから邦題もこうなってしまったわけ。今となっては直しようもない。

・・・と、そのくらいまでのことはオレは本で読んで知っていた。
「日本軍将校とタイ人女性の悲恋モノ」っていうから、タイの美人人妻か未亡人が、何かの
拍子に知り合った日本軍将校と許されぬ恋に落ちて・・的な話を勝手に想像していた。

府中図書館にこれの完訳があるから借りてナナメ読みした(長いんだよ)。実際読むと
想像とはだいぶ違ってヒロインの方はまだ若いタイの女子大生。前に「バンコクの深川」
書いたバンコクノーイ、トンブリー地区が舞台で、その辺のタイ生活感あふれる描写は
実に素晴らしい。悲恋モノっていうけど、意外にも二人は国際結婚もするんだよね。でも
やっぱり最後は悲しい結末。
 

 
 
この小説の、タイにおける人気は日本人の想像を絶している。
すでに4回だか5回だか映画化され、5回だか6回だかTVドラマ化されてる。ほとんどタイの
「忠臣蔵」状態。ストーリーはすでにみんな知ってるわけで、その時人気絶頂のイケメン俳優が
日本人将校を、売り出し中の若手美人女優がヒロインをやるのがお約束みたい。
「メナムの残照」のはなし_c0393255_17471864.jpg
  
あるドラマ化の時はタイ中の人がTVにかじりついたからバンコク名物の夜の交通渋滞が
なくなったなんて伝説もある。「『君の名は』の放送で女湯がカラになった」という日本と
まるっきり同じ。生まれてきた女の子にこの小説のヒロインと同じ「アンスマリン」という
名前を付ける親が激増したなんて話もある。

じゃ日本軍将校の方の名前は?ヤマモト?タナカ?いや違う。「コボリ」なのだ。
漢字なら小堀。日本的にはありふれた名前じゃない。しかしこの小説および映画・ドラマの
せいで「コボリ」はタイで最も有名な日本人の苗字になっちまった。残念ながら「イワンヤ」
なんて苗字はお呼びじゃないの(笑)
「メナムの残照」のはなし_c0393255_17471866.jpg
   
たぶん中国や韓国のドラマにおける日本軍なんて、アメリカ映画におけるドイツ軍と同様
「残忍で冷酷で最後にやっつけられる」存在でしかないと想像される。でもタイでは
タイ女性と日本軍将校の大悲恋が何度も映像化されてる。こんな国、他にあるんだろうか。

考えてみたら東南アジアを舞台にした戦争モノって「単なるドンパチ」とは違うものが多い。
アメリカ映画だと「戦場にかける橋」、日本映画だと「ビルマの竪琴」とか「戦メリ」とか。
勝った負けたより、人間描写に重きを置いた映画が多いと思うのは気のせいか。

しかし旧日本軍と現地人との関係を悲恋メロドラマにしたって例は他に知らないよ。
この小説がタイの対日イメージ形成の上で果たした役割は計り知れないとオレは思うのだ。
日本政府は今すぐ作者のトムヤンティ女史に「タイにおける日本人イメージ向上に貢献」と
いう理由で勲章をあげるべきだ・・と思ったらトムヤンティさんは2年前に他界されてた!
ああ残念。この場を借りてトムヤンティ女史に深く感謝申し上げたい。
「メナムの残照」のはなし_c0393255_17383481.jpeg

もしアナタがたまたま超幸運にも「小堀」という苗字をお持ちの男性だったら、今すぐタイに
渡航することをお勧めしたい。若い人はどうだか知らないけど、タイのオバさま世代だったら
「私、コボリといいます」と自己紹介しただけで、たちまち目がハート型になるかも(笑)。

オレは約9カ月間スパンブリーに駐留・・いや派遣されてたけど、肩書は日本軍将校ならぬ、
インチキ日本語教師。そんなヤロウと恋に落ちてくれる「スパンブリーのアンスマリン」は
残念ながらいなかった。苗字がコボリじゃなかったせいだろう(笑)。

「メナムの残照」の日本語字幕つきDVDあれば見てみたいんだけど、見当たらないんだよなぁ。
 
 


by tohoiwanya2 | 2023-06-18 21:59 | 2022~23 タイ派遣事業 | Comments(4)
Commented by Bきゅう at 2023-06-18 23:01
そういうお話があるんだ。邦訳とかしたら、どこかの国からクレームが来そうだから、ないのかな。ゆうつぶで、英語のやつを探してみました。Sunset over the killing field。同じなのかな。
https://www.youtube.com/watch?v=fJhZESUV_T0
Commented by tohoiwanya2 at 2023-06-19 21:01
>ゆうつぶで、英語のやつを探してみました

Bきゅうさん:
あー、英語題名は原作とちょっと違うけど、これですね。たぶんこれが最も新しく
映画化されたものじゃないかと思います。日本語字幕版(吹き替えでもいいけど)DVD、
どこか出してくれないかなぁ?
Commented by schnee_yuki88 at 2023-06-21 00:02
「メナムの残照」、そんなにタイでは色々展開されていたんですねぇ‥。めこん、て名前のアジア系の本専門出版社から何やら長い原作訳本が出てる。程度の認識しかありませんでした。

でもまぁ日本兵を憎むべき冷酷な敵役としてではなく、そんな好意的(?)な風に描写してくれているというのは、ありがたい話ではあります。私もドラマとか映画の日本語訳が出たら見てみたいですが、タイ映画で日本語訳も存在するのって、まだまだ数少ないんですよね、、。
Commented by tohoiwanya2 at 2023-06-21 21:42
>何やら長い原作訳本が出てる。程度の認識しかありませんでした

yukixさん:
文庫では抄訳がある(あった?)らしいんですけど、地元の図書館に完訳があったので借りてみました。
しかしけっこう厚い上下巻セットはぜんぶキチンと読むの長すぎてトバシ読み(笑)。
ヒロインのアンスマリンっていうのはタイ語で「昇る朝日」みたいな意味だそうで、
コボリさんは彼女のことを「日出子」と日本風に呼んだりするんですよ。日本語版DVD出ないかなぁ・・・。


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